事業計画書を作成する
事業計画書が売上げや利益を生むわけではありませんし、時間も掛かるからと計画書を作成する事業者は少ないようです。 最初に事業計画書を作成する場面は、創業の時でしょう。創業時に金融機関から融資を受ける為、創業計画書(事業計画書)を作成した経験を持つ方も多いのではないでしょうか。 創業計画書は、創業者の事業に対する思いをこの計画書に落とし込んで創業者自身で作成することになります。創業計画書に組み込むものとしては、創業動機、創業理念、企業概要、資金調達計画、損益計画、販売計画等があります。 以前、フランチャイズに加盟して創業を考える方からの相談がありました。計画書としては申し分なく、販売手法から広告手法まで細かく計画された素晴らしい創業計画書です。しかしながら、相談者に計画書の内容から質問を出しても本人からの回答がほとんどありません。事業を行う本人の姿がこの創業計画書から見えてきません。実はこの創業計画書、フランチャイズ元が作成した事業計画書をご自分の創業計画書として持参されたものでした。この計画書には本人の事業への思いや姿勢が入ってないものでした。これでは、創業計画書になりません。創業後の相談者の事を考えると本人以上に私が不安になりました。 創業後、年月が経過すると社員の登用や会社の体制などを検討するようになります。そろそろ経営計画書を検討する時期になります。「御社の経営計画書は」と尋ねると、「創業時に作成した計画書」と答える経営者が多くいます。経営を指導する際に、事業内容や考えを早く把握するために、経営計画書の提示を求めますが、大半の企業は提示がありません。見せたくないというより、持ってないというのが現状です。経営計画書に盛り込む内容は、経営理念、経営方針、中・長期事業構想、当期経営目標、当期個別計画、当期数値目標等から成り立ちます。故に経営の羅針盤といわれ、社員に対しての道標にもなります。 経営計画書は作成時点で、事業経過による経験・知識の蓄積があり、事業分析データも収集することが可能であることから、具体的で実行力のある計画書を作成することになります。今から経営計画書を作成するのであれば、「中小企業新事業促進法」の「経営革新支援」の利用も検討するといいでしょう。中小企業新事業促進法は、政府がやる気のある企業を何とか応援しょうというものです。事業計画は、経営革新計画として「何か新しいこと」を取り入れ、その結果も出すことも条件にいれて作成します。この事業計画書を県知事が承認すると、政府系金融機関や都道府県から低金利で融資が受けられる、信用保証の特例が受けられる、都道府県から補助される補助金を受けられる等のメリットがあります。但し、計画の承認は支援措置を保障するものではないので、計画の承認後、利用を希望する支援策の実施機関の審査が必要となります。 経営革新計画のみならず経営計画書、創業計画書の作成方法が分からない方が多いのも事実です。各商工会議所では、相談窓口を設置して専門家による計画書作成の指導を実施していますので、利用されてはいかがでしょうか。 執筆: 山口商工会議所中小企業支援センター窓口専門家 中村伸一 山口商工会議所月報 2008年4月号